2008年9月4日木曜日

第31回「こころとからだ」研究会のお知らせ

 第31回「こころとからだ研究会」を、下記の日程と内容でおこなうことになりましたのでご案内いたします。

 今回話題提供いただきます岡本早苗(Sanae Okamoto-Barth)さんは、京都大学霊長類研究所の母子チンパンジー認知発達研究に参加して視線追従など社会的認知の発達について研究をおこない、その後は、マックス・プランク進化人類学研究所他海外研究施設・大学に所属し、旺盛に比較認知発達研究を展開されています。)

 今回は、北海道大学での日本心理学会大会や京都での国際ワークショップに参加されるため帰国されますが、彦根でもこの間の研究成果についてお話いただくことになりました。ご多忙な折とは存じますが、皆様のご参加をこころよりお待ちいたしております。


日時:9月12日(金)16:30-18:30
場所:D4-203号室(人間文化学部棟2階)

【話題提供者】
岡本早苗(Sanae Okamoto-Barth)先生
(マーストリヒト大学経済学部 経済・経営管理学科 & 心理学部 認知神経学科)

【演題】
視線追従能力の発達:比較認知発達的視点からの実験的検証

【要旨】
 日常生活でヒトは他者の視線を追従し、その方向,対象,事象に注意を向けることで円滑で効果的なコミュニケーションをおこなっている。そのような一連の行動を「視線追従」あるいは「共同注意」といい、他者の心の状態を推論する「心の理論」はこの共同注意の機構に立脚していると考えられている。
 視線追従は、乳児が言語を獲得する以前(生後12 ヶ月頃)に出現する(e.g., Corkum & Moore,1991)。また、ヒト以外の霊長類においても視線追従は調べられ、特に進化的にヒトに近いとされるチンパンジーを対象にした研究では、成体のチンパンジーにおける視線追従が報告されているが、発達的見地から視線追従を探ることはほとんどおこなわれていなかった。
 さらに、ヒトでは指示対象を興味を引くおもちゃなど弁別しやすいものにしたり、実験者が対象を指示する際に身振りを大きくしたり、会話を含むなどすることが視線追従の発生を促進することが知られている。これらの外的要因に進化的視点を加味した報告はまだあまり得られていない。また、多くの視線追従研究では事象そのものあるいは生じる前に焦点が当てられ、事象発生後の持続についてはヒトを含めてもあまり調べられていない。
 そこで今回の発表では、次の3つの研究課題(1.視線追従の発生時期、発達の過程における進化的視点からの検証、2.視線追従に影響を及ぼす外的要因、3.視線追従事象の記憶、維持についての検討)に焦点を当てた一連の実験的検証から得られた見解を述べる。