2006年7月21日金曜日

『小学校中学年男子の仲間関係のあり方について_大都市近郊の子どもの学校生活のエスノグラフィー調査より』

第25回(2006年7月21日) 松田洋介 先生(滋賀県立大学人間文化学部講師) 
『小学校中学年男子の仲間関係のあり方について_大都市近郊の子どもの学校生活のエスノグラフィー調査より』
【要旨】報告者は大都市近郊にある小学校中学年の教室に、約1年半、週に一度のペースで訪問し、授業・休み時間・課外活動なども含めて子どもたちの学校生活のあり方を観察した。今回はその調査で得られた知見から、とりわけ男子の仲間関係の特徴に焦点をあてて報告する。その際、以下の2点に関わる事例を紹介する。ひとつはこれまでにも男児の集団形成の核となるといわれてきた、いわゆる「ボス」的な子どもの態度や振る舞いについてである。もうひとつは、一見無秩序的・場当たり的な遊びの中で、彼らが生成し・従う仲間関係の様相についてである。それらの分析を踏まえて、自律的な集団の形成が遅れているといわれている現在の子どもたちの対人関係・社会関係の特徴についての若干の考察を提示する。

2006年7月7日金曜日

『マハレの野生チンパンジー調査(2005.5-2006.4)報告』

第24回 2006年7月7日
藤本麻里子先生(滋賀県立大学)

『マハレの野生チンパンジー調査(2005.5-2006.4)報告』

【要旨】発表者は、2005年5月から2006年4月の1年間、タンザニアのマハレ山塊国立公園に滞在し、野生チンパンジーの観察を行った。この観察期間中に、これまでで初めて観察された野生チンパンジーの行動を2つ紹介する。まず一つは、ツチブタ(英名:Aardvark、学名:Oryteropus afer)の死体をチンパンジーが発見した場面での行動である。自らもアカコロブスなどの哺乳類を捕食するチンパンジーが、ツチブタの比較的新しい死体にどのように反応したかを報告する。次に、2005年12月5日に大きな地震が発生し、翌日から頻繁な余震が観測された。その余震に対してチンパンジーがどのように反応したのかを、あるワカモノメスのユニークな行動を中心に発表したい。この2つの事例の紹介とともに、1年間の調査生活について報告する。

2006年5月12日金曜日

『チンパンジーとヒトの幼児における遊びといざこざ』

第23回(2006年5月12日) 松阪崇久 先生(滋賀県立大学人間文化学部研究員) 
『チンパンジーとヒトの幼児における遊びといざこざ』
【要旨】まず前半で、発表者のこれまでの研究内容を紹介させていただく。発表者はこれまで、タンザニア・マハレ山塊国立公園の野生チンパンジーを対象として、遊び行動や母子関係の発達に関する研究をおこなってきた。その中から、社会的遊びの中で発せられる音声(「笑い声」: play panting)についての研究と、「物を使った遊び」と考えられる行動が群れの個体に広まる過程に関する研究をご紹介したい。後半では、今後の研究計画を発表させていただきたい。発表者は、ヒトとチンパンジーの行動比較をするために、この4月よりヒト幼児の自由遊び場面の観察をおこなっている。その中で、ヒトとチンパンジーは「他個体との関係の持ち方」「コミュニケーション場面での振る舞い方」に大きな違いがある、という印象を持った。この印象をもとに、遊びやいざこざをはじめとして、さまざまなコミュニケーション場面におけるヒトとチンパンジーそれぞれの特徴を再検討したい。