第16回 (2005年1月28日) 服部裕子先生(京都大学大学院文学研究科) 『フサオマキザルにおける協力行動』
【要旨】新世界ザルのフサオマキザルは、ヒトから系統発生的に遠い種であるが、道具使用や物体の永続性など物理的知性に関する研究において好成績をあげることが知られている。しかしながら、彼らの社会的知性についてはまだあまり知られていない。そこで本研究では、このフサオマキザルを対象に、協力行動という文脈を用いて彼らの社会的知性を調べる実験を行った。その結果、彼らは自発的に分業することによって問題を解決し、その解決法も洞察的であったことが示唆された。また、他者の協力が必要な時にはそうでない時と比べて「パートナーを見る」という意思伝達的行動が多く見られた。さらに、不公平な報酬分配でも、毎試行役割を交代した時には協力を維持することができた。彼らの社会的知性について考察し、今後の研究の展開を議論したい。