2005年10月28日金曜日

『UCLAでの授業、訓練、地域貢献の実際』

第22回(2005年10月28日)細馬宏通(滋賀県立大学人間文化学部講師) 
『UCLAでの授業、訓練、地域貢献の実際』
【紹介】昨年度,UCLAに長期滞在された細馬宏通先生に,研修報告をしていただきます。細馬先生は、ジェスチャー研究、会話分析の第一人者,チャック・グッドウィンのもとで研修を受けられました.UCLAでのジェスチャー研究の成果だけでなく,現地の教育訓練の実際や、地域と密着しての研究のあり方など,細馬先生が体験された有意義なお話をきかせていただく予定です.

2005年7月22日金曜日

『英語学習者間の聞き返しにおける発話とジェスチャーの関係』

第20回 (2005年7月22日) 松村早希子(滋賀県立大学人間文化学研究科) 『英語学習者間の聞き返しにおける発話とジェスチャーの関係』
【要旨】英語学習者が英語で話をしていて、知らない言葉、或いは、聞き慣れない言葉があった時、聞いた言葉をそのまま聞き返す場面が見受けられる。この聞き返しに対し、話に参加している学習者はどのように対応してゆくのだろうか。英語学習者の聞き返しによるやり取りに注目をすると、聞き返された言葉は、参加者の間で共有され、繰り返し発語されていた。では、繰り返される言葉は、全て同じ言葉なのだろうか。発話のみに焦点をあてると、確かに同じ言葉である。しかしながら、ジェスチャーに注目すると、実は、言葉が繰り返される度にジェスチャーの形は変わり、しかも、言葉が共有されるのと同様にジェスチャーも共有され変化してゆくのである。本発表では、このような発話とジェスチャーに焦点をあて、それぞれがどのように関係しているのかを見ていく。

2005年6月24日金曜日

『共同作業における模倣シークエンスのマイクロ分析』

第19回 (2005年6月24日) 細馬宏道 (滋賀県立大学人間文化学部講師)
『共同作業における模倣シークエンスのマイクロ分析』
【要旨】わたしたちは、誰かと誰かが「同じこと」をしているのを見てそれを 「まね(模倣)」と呼ぶ。しかし、実際の相互行為において、異なる参 与者どうしは、あらかじめ何が「同じこと」になるべきかを知っている わけではないし、自他の行為がどのように対応しうるかについて、モデ ルを持っているわけではない。にもかかわらず、結果的に「同じこと」 が行なわれるのはどういうわけだろうか。この発表では、自発的な模倣 行動を起こすような実験設定から得られた観察結果から、行為の連鎖が どのように組織化され、観察者にとって「模倣」として立ち現われてく るかを明らかにする。 模倣を考えるには、「ターン・テイキング」「オーバーラップ」「移行適切場所」といった会話分析の概念が役に立つ。ただし発語のみのコ ミュニケーションとは異なり、身体動作のコミュニケーションでは、い くつものモードが重複を許しながらスピードの微調整を行なっている。 そのため、会話分析の概念は、モード間の重複とスピード調節を考慮し た身体行為の概念として読み替えられる必要がある。本発表では、この 作業を通して、じつは模倣が、コンマ一秒単位の精密な相互行為の結果 為されていることを明らかにしよう!

2005年5月20日金曜日

『乳児が示す乳児への選好』

第18回 (2005年5月20日)
実藤和佳子(九州大学人間環境学府) 『乳児が示す乳児への選好』
【要旨】日常生活の中で、乳幼児が同世代の乳幼児に遭遇するとき、年長の子どもと遭遇するときよりも高頻度で相手を凝視・追視していることがある。先行研究でも写真や描画を用いて、乳児が年長の幼児より乳児の方を長く注視することが確認されている。これまで、乳児が同世代乳児を選好する現象は、成人と同様の幼児図式への選好として解釈されてきた。しかし近年、模倣研究から、自分と似たものへの感受性が乳児期からあるという仮説が提唱され始めている。乳児が示す乳児への選好現象は、より自分と似た他者への選好でもあるのかもしれない。報告者はこれまで、乳児が示す乳児への選好の認知的基盤の解明をめざした実験的検討を重ねてきた。発表ではこれまでの研究を紹介し、乳児期における社会的認知発達とその基盤について議論を深めたい。

『認知機能低下と摸倣の障害_軽度DAT群と健常高齢者の無意味身振りの模倣能力差』

第18回 (2005年5月20日)
河野直子(名古屋大学情報科学研究科) 『認知機能低下と摸倣の障害_軽度DAT群と健常高齢者の無意味身振りの模倣能力差』
【要旨】DAT(dementia of the Alzheimerユs type)患者では,着衣や道具使用などの日常動作について遂行困難やパントマイムでの表現困難が観察される.こうした障害は失行(apraxia)と呼ばれ,中等度以上のDAT患者で報告が多い.他方,日常的身振りの同時模倣,遅延模倣課題においては,DAT重症化に伴い,身振りの正確性が低下する.遅延模倣課題だけでなく同時模倣課題でも困難が生じることから,DATの失行が単に彼らの著しい記憶障害に依存しているというより,反応の構成困難や身振りの制御障害に依存して生じている可能性が示唆される.しかし,先行研究では,「慣習化された日常的身振りの模倣」を課題とし,その「正確性」を評価している.そのため,反応の構成や身体制御の障害と,慣習化された動作の適切な抑制困難とが,分離されておらず,両者が混在していた可能性が残る.そこで本研究では,(1)動作手続きが自動化されていない非日常的な身振りの模倣課題を採用し,(2)日常的な身振りの模倣課題(パントマイム課題,同時模倣課題)については,課題動作の適切なイメージに基づいた身振りが表出されたか否かで評価するという2点の工夫を加えて,軽度DAT患者の身振り障害について検討した.認知機能に障害のない健常高齢者とのエラー率比較の結果,日常的身振りに明確な障害が現れる以前にすでにDAT患者では身振りの構成・制御障害が生じていることが確認された.結果は,身振り障害の発現メカニズム,及び無意味身振りの摸倣課題のDAT検出力の点から考察された

2005年4月22日金曜日

"Spatial construction by chimpanzees"

第17回 (2005年4月22日) Patrizia Poti(Institute for Cognitive Sciences and Technologies) "Spatial construction by chimpanzees"
ABSTRACT
Combining objects with each other is a basic way by which human and nonhuman primates acquire and express knowledge about spatial relations. In particular, repeating a spatial relation is a fundamental way to understanding that relation at a higher level than perception or recognition. However, different types of spatial relations imply different levels in understanding inter-object relations and coordinating positions in space. For example, stacking relations only require one place, one dimension and one direction of object placement and so minimal coordination between objectsユ positions, whereas next-to relations can be constructed along different dimensions and directions of object placement and require much more coordination and planning. Six human and enculturated chimpanzees, including two bonobos, age 6 and 11 years, and four chimpanzees, ages 6 to 21 years, were presented with sets of 12 objects, that comprised one or two or three different forms. The chimpanzees' ability to repeat inter-object spatial relations was examined. Results showed that chimpanzees repeated next-to relations with more primitive procedures than stacking relations. Therefore, chimpanzees can master simultaneous spatial relations between separate elements and coordinate independent positions in space only to a limited extent.

2005年1月28日金曜日

『フサオマキザルにおける協力行動』

第16回 (2005年1月28日) 服部裕子先生(京都大学大学院文学研究科) 『フサオマキザルにおける協力行動』
【要旨】新世界ザルのフサオマキザルは、ヒトから系統発生的に遠い種であるが、道具使用や物体の永続性など物理的知性に関する研究において好成績をあげることが知られている。しかしながら、彼らの社会的知性についてはまだあまり知られていない。そこで本研究では、このフサオマキザルを対象に、協力行動という文脈を用いて彼らの社会的知性を調べる実験を行った。その結果、彼らは自発的に分業することによって問題を解決し、その解決法も洞察的であったことが示唆された。また、他者の協力が必要な時にはそうでない時と比べて「パートナーを見る」という意思伝達的行動が多く見られた。さらに、不公平な報酬分配でも、毎試行役割を交代した時には協力を維持することができた。彼らの社会的知性について考察し、今後の研究の展開を議論したい。