2005年5月20日金曜日

『認知機能低下と摸倣の障害_軽度DAT群と健常高齢者の無意味身振りの模倣能力差』

第18回 (2005年5月20日)
河野直子(名古屋大学情報科学研究科) 『認知機能低下と摸倣の障害_軽度DAT群と健常高齢者の無意味身振りの模倣能力差』
【要旨】DAT(dementia of the Alzheimerユs type)患者では,着衣や道具使用などの日常動作について遂行困難やパントマイムでの表現困難が観察される.こうした障害は失行(apraxia)と呼ばれ,中等度以上のDAT患者で報告が多い.他方,日常的身振りの同時模倣,遅延模倣課題においては,DAT重症化に伴い,身振りの正確性が低下する.遅延模倣課題だけでなく同時模倣課題でも困難が生じることから,DATの失行が単に彼らの著しい記憶障害に依存しているというより,反応の構成困難や身振りの制御障害に依存して生じている可能性が示唆される.しかし,先行研究では,「慣習化された日常的身振りの模倣」を課題とし,その「正確性」を評価している.そのため,反応の構成や身体制御の障害と,慣習化された動作の適切な抑制困難とが,分離されておらず,両者が混在していた可能性が残る.そこで本研究では,(1)動作手続きが自動化されていない非日常的な身振りの模倣課題を採用し,(2)日常的な身振りの模倣課題(パントマイム課題,同時模倣課題)については,課題動作の適切なイメージに基づいた身振りが表出されたか否かで評価するという2点の工夫を加えて,軽度DAT患者の身振り障害について検討した.認知機能に障害のない健常高齢者とのエラー率比較の結果,日常的身振りに明確な障害が現れる以前にすでにDAT患者では身振りの構成・制御障害が生じていることが確認された.結果は,身振り障害の発現メカニズム,及び無意味身振りの摸倣課題のDAT検出力の点から考察された

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