2004年12月10日金曜日

『食物選択の学習過程にかんする霊長類の比較研究』

第15回 (2004年12月10日) 上野有理先生(中央学院大学非常勤講師) 『食物選択の学習過程にかんする霊長類の比較研究』
【要旨】ヒトの子どもは、さまざまな形で他者から影響を受けながら食物について学んでいく。その結果、さまざまな食物を選び食べるようになるが、きわめて多種多様な食物を食べることは、ヒトのもつ特徴の1つである。その生物学的基盤を探るためには、ヒト以外の霊長類における食物選択の学習過程を明らかにすることが重要である。報告者はこれまで、系統的にヒトにもっとも近縁の、チンパンジーをおもな対象として、食物選択の基盤となる味覚、および社会的場面における食行動の発達について研究をおこなってきた。本公演では、ヒトでえられている知見を背景として、報告者がこれまでおこなってきた研究を紹介する。ヒトとヒト以外の霊長類を対比させることで、ヒトのもつ特徴を浮き彫りにし、比較認知科学的視点から、今後の研究の展望について述べたい。

2004年11月5日金曜日

『自閉症児の社会的認知に関する発達認知神経科学的検討』

第14回 (2004年11月5日) 千住 淳先生(東京大学大学院総合文化研究科) 『自閉症児の社会的認知に関する発達認知神経科学的検討』
【要旨】自閉症とは、対人・社会行動に特異的な困難さを抱える発達障害であるが、その障害の認知的・発達的基盤についてはいまだ不明な点も多い。ゆえに、自閉症児が社会的な情報をどのように処理しているのかについての基礎的な研究を行うことは、自閉症でない、いわゆる「健常児」の社会性の発達について重要な知見を与えるだけでなく、自閉症の有効な診断法や臨床的、教育的介入法を開発するための基礎データを提供することにもなる。 そこで、報告者はこれまで、発達の初期から見られる社会的行動である「アイコンタクト」の認知的基盤について、自閉症児及び健常児を対象として実験心理学的、認知神経科学的研究を行ってきた。本公演では報告者のこれまでの研究を紹介し、社会性の発達やその障害の基盤について考察するとともに、今後の研究の可能性についても議論したい。

2004年10月22日金曜日

『初期音声コミュニケーションと社会的制度:セントラル・カラハリ・サンにおける乳児への呼びかけと"詩"』

第13回 (2004年10月22日) 高田明先生(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科) 『初期音声コミュニケーションと社会的制度:セントラル・カラハリ・サンにおける乳児への呼びかけと"詩"』
【要旨】従来、養育者は乳児向け発話(IDS)によって普遍的に子どもの発達の最近接領域に働きかけるといわれてきた。その一方で、養育者_乳児間相互行為は常に特定の社会文化的文脈で起こることは強調されてこなかった。本研究が対象とするセントラル・カラハリ・サン(グイ/ガナ)では、乳児をあやす場合にしばしばその名前を変形した呼称を用いる。こうした発話には、特殊な発声、その繰り返しや変奏が認められる。これらはその発話をリズミカルにし、養育者はそれにより乳児を対話に関与させようとしている。さらにいくつかの乳児向け発話は、呼称の繰り返しや遊技的な声かけによって特徴づけられるメハノモとの類似性を示す。この発話は呼びかけから詩への移行形態を示す。本研究は、グイ/ガナの初期音声コミュニケーションの特徴のうち少なくともいくつかは従来IDSについていわれてきた特徴と一致しないこと、また初期音声コミュニケーションは当該の社会の制度と深く関わっていることを示唆する。

2004年10月8日金曜日

第11回、12回の記録

第11回 (2004年9月8日) 八木英二(滋賀県立大学人間文化学部教授)
『子どもの身ぶりの研究』

第12回 (2004年10月8日) 細馬宏通(滋賀県立大学人間文化学部講師) 『ジェスチャー研究のこれからを語る』

2004年7月17日土曜日

『こころの発達の進化人類学』

第10回 (2004年7月17日)  石田英実(本学人間看護学部)松嶋秀明(本学人間文化学部)竹下秀子(本学人間文化学部)黒田末寿(本学人間文化学部) 『こころの発達の進化人類学』
●「こころの発達の進化人類学」/日本人類学会進化人類学分科会との共催/オーガナイザー:石田英実(滋賀県立大学)
●日時:7月17日(土) 13:30〜
●場所:滋賀県立大学人間看護学部E5棟102室(第2中講義室)
●プログラム
1.はじめに
  石田英実(滋賀県立大学人間看護学部)
2.交渉される非行少年の「過去」
  松嶋秀明(滋賀県立大学人間文化学部)
3.ヒトの赤ちゃんの「探索」の発達
  竹下秀子(滋賀県立大学人間文化学部)
4.人類社会進化における心と体の試論:情動の進化と自然制度
  黒田末寿(滋賀県立大学人間文化学部)
5.総合討論

2004年7月9日金曜日

『テナガザルの知性とコミュニケーション』

第9回 (2004年7月9日) 井上陽一 先生(西舞鶴高等学校)井上悦子 先生(中丹養護学校)平田聡 先生(林原類人猿研究センター)
『テナガザルの知性とコミュニケーション』

テナガサルの知性について、ビデオ資料をもとに興味深い発表をいただきました。平田先生には指定討論をつとめていただきました。

2004年6月18日金曜日

『母子間の抱きの人間科学的研究−ダイナミック・システムズ・アプローチの適用』

第8回 (2004年6月18日) 西條剛央さん(国立精神・神経センター精神保健研究所) 『母子間の抱きの人間科学的研究−ダイナミック・システムズ・アプローチの適用』
【要旨】博士論文をもとに,母子間の抱っこの研究を発表させていただきます。発達の初期において,授乳,なぐさめ,運搬,コミュニケーションといった行為はしばしば「抱き」を介して実行されます。したがって,抱きは母子という基本的2者関係において,様々な行動を媒介する重要なシステムといえるかと思います。こうした抱きという行為の重要性にも拘わらず,抱きに関連した研究においては,子どもを左右のどちらで抱くことが多いかといった左抱きの優位性に関する研究が多く見られますが「抱きとはどのような行為であるか」といった基本的かつ根本的な問題は検討されてきませんでした。申請者はこの根本的な問いを明らかにすべく以下のようなキーワードを基軸に,抱きの検討を重ねてきました。「遠心ム求心」,「縦断研究」,「自己組織化」,「ダイナミック・システムズ・アプローチ」,「間主観性」,「離抱」。当日は,博論の概要に加えて,特に総合議論において論じた,完了した事態に対して外部から記述してきた,これまでの行動研究の根本問題を議論していけたらと思います(『母子間の抱きの人間科学的研究』(北大路書房)のp116〜参照のほど)。

2004年5月28日金曜日

『ギニア共和国ボッソウの野生チンパンジーの観察報告』

第7回 (2004年5月28日) 水野友有さん(京都大学霊長類研究所・思考言語分野) 『ギニア共和国ボッソウの野生チンパンジーの観察報告』
【紹介】話題提供者の水野友有さんは、滋賀県立大学人間文化学研究科において、この3月に博士号を取得されました。これまでは、京都大学霊長類研究所において、飼育下のチンパンジー母子を対象としたコミュニケーションを、ヒトの母子との比較から研究されてこられました。博士号取得後は、研究対象を野生チンパンジーの母子にも広げていらっしゃいます。次回は、水野さんがご自身の目でじっくり観察された野生チンパンジーの母子間コミュニケーションについて、ご報告いただく予定です。

2004年5月14日金曜日

『外国語(英語)学習者のジェスチャーが発話に与える影響』

第6回 (2004年5月14日) 松村早起子さん(滋賀県立大学大学院博士課程) 『外国語(英語)学習者のジェスチャーが発話に与える影響』
【要旨】言語産出とジェスチャーの関係について、近年その関係をモデル化する研究が、 de Ruiter(2000),Krauss et al.(2000), Kita&Oャzyuャrek(2003)によって報告された。それぞれが示すモデルは、Levelt(1989)の言語産出モデルを基に、ジェスチャー産出過程が加えられたモデルであり、ジェスチャーと言語産出がいつ、どのよ うに影響を与え合うかという点で、異なりを示している。しかしながら、全てに共通 して、ジェスチャーが言語産出に影響を与えることが記されている。 一方、英語教育の実践や研究におけるジェスチャーは、「指導内容」として扱う身振り言語の日英比較や、「指導方法」とするTPRなどが取り扱われてきた。しかし、 言語産出に直接影響を与える要因として言及されることは少ないように思われる。そ こで、ジェスチャーを交えて話すことが、言語産出に関わり、言語産出を促進することを示し、英語教育実践における身体表現の役割について再考を行う。

2004年4月16日金曜日

『ニホンザル成体メスの毛づくろい交渉−交尾期と非交尾期の比較』

第5回 (2004年4月16日) 藤本麻里子さん(滋賀県立大学大学院)
『ニホンザル成体メスの毛づくろい交渉−交尾期と非交尾期の比較』
【紹介】本発表では修士論文の内容を紹介していただきます。藤本さんは、同志社大学大学院工学研究科数理環境科学専攻修士課程を経て、 今春、本学大学院人間文化学研究科生活文化学専攻人間関係論研究部門 博士後期課程に入学されました。修論では、嵐山E群を対象に、毛づくろい 交渉の開始・Groomer(毛づくろいする者)とGroomee(毛づくろいされ るもの)の役割交代の起こり方・毛づくろい交渉の終了の状況を詳しく 観察されています。毛づくろい交渉の一連のシークエンスを解明し、メス−メス間の毛づくろい交渉が交尾期と非交尾期とでは異なることを明らかにした興味深い内容です。

2004年3月12日金曜日

第1回から第4回まで

第1回(2004年1月30日) 明和政子先生(滋賀県立大学人間文化学部講師) 『見つめあう母子−霊長類における見つめあうコミュニケーション』

第2回(2004年2月13日) 細馬宏通先生(本学講師)
『ことば・プロソディ・ジェスチャーの個体内・個体間相互作用- 空間参照枠の修復をめぐって』

第3回 (2004年2月27日) 平田聡先生(林原類人猿センター・主任研究員) 『社会的知性の進化−チンパンジーの協力行動』

第4回 (2004年3月12日) 荒川歩先生(同志社大学、文学研究科)
『話者はどこにいるのか?:顔文字と身ぶりの分析から』